ケアの専門性とは何か

ーケアの専門性とは何か-
2021.10

目次

スキルに介入するスキル

日常生活のスキル

 支援のスキルとは、利用者(子ども、障害者、高齢者など)のスキルに介入するスキルのことである。
 ここで言う利用者のスキル(技能)とは、日常生活活動を遂行する技能であり、話す、歩く、顔を洗う、歯を磨くなど、通常はだれにでもできる動作と行為をさす。
 こうした日常生活活動の技能の遂行には特別な能力は必要としない。アスリートとは異なり、誰にでもできるように定型化され、身体の発達の過程で身に着けるものとされる。
 私たちは通常、日常生活がこうした技能によって組み立てられていることを意識しない。障害や高齢などで体が不自由になったときに、日常生活が技能に支えられてきたことに改めて気づくのである。
 しかし、日常生活活動の技能は単に生物学的な身体機能(モータースキル)につきるものではない。身体的には可能な動作であっても、社会的には制約されることが起こる。マナーや箸の使い方などはその端的な例である。子どもは発達段階において、身体的な技能を土台にして、話し方や表情、食事の作法、乱暴な動作への配慮など、総じて日常生活を送る上で必要なふるまい方を身に着けることを要求される。これをソーシャルスキルという。
 こうして日常生活活動の動作は単に物理的な(あるいは生物学的な)運動の連鎖と区別され、公共的(社会的)な性格を持つ。かくして人間社会はありのまま自然と区別され、第二の自然と呼ばれる。子どもたちもまた、こうした技能を身に着けることを通じて社会の一員となる。

支援のスキル(技能)

 一方の支援のスキルとは、利用者の日常生活活動の技能を補完することによって日常生活を円滑に送ることができるようにする、あるいは、自立に向けて技能の強化や獲得を支援する。そこでは支援者は、単に利用者の意向に基づいて支援を行うだけでなく、日常生活を送る上で必要とされる課題を発見し、目標を設定し、その目標の実現への誘導などを行う。したがって、支援者のスキルは利用者の身体機能に対する物理的なものに留まることなく、対人関係のスキルなどが大きな意味を持つ、そこでは、意志の疎通に始まり、表情や声のかけ方、話し方、タイミングの設定などが不可欠である。ここにケアのスキルの専門性がある。
 しかし、多くの場合、こうした支援のスキルが固有のスキル(専門性)であるとは理解されず、支援者の姿勢や心構え、あるいは性格など、総じて倫理の問題とみなされることが多い。
 スキルとは一般的に技能と呼ばれ、技術とは区別される。技能はその担い手(身体)から切り離すことができず、それ故に言葉でいい表すことも難しい。一般に暗黙知(カール・ポランニー)と言われるのもこの領域となる。
 一方で技術とは端的に科学技術(テクノロジー)のことであり、自然法則の意識的適用(因果法則)であるとされる。そこでは普遍性と再現性(誰がやっても同じ結果が出る)が特徴とされる。したがって、支援のスキルをマニュアル化することは困難であり、ないものねだりとなる。支援のスキルの獲得のためには、(あたかも自転車に乗ることを学ぶように)試行錯誤と修練が必要となる。
 第三者評価もまた、しくみを(システム)を評価するという性格であり、支援のスキルを評価しない、あるいは支援の専門性がスキルであることを知らない。第三者評価は、システムと倫理のアマルガムであり、ここにスキルの立つ瀬はない。

ここから全文がダウンロードできます。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次