技能としての「介護の心」

高山さんの本に書いたコラムです。

 介護の専門性とは、共感を持って要支援者の日常生活遂行能力レベルに合わせて介入し、支援する技能のことを指す。
 しかし、こうした介護の技能や専門性の存在は世間であまり知られていないようだ。
 ひとつには、日常生活を行えるようにすることが、あまりにも当たり前に思えるからであり、もうひとつは、その対象が、誰もがいずれはなる「高齢者」だからだろう。
 しかし、介護現場では心身の機能が低下している要介護者への一見「技術」とは思われないような「態度」や「姿勢」そのものが技能となる。つまり、介護は肉体労働であると同時に「介護の心」を必要とする労働であり、「感情労働」あるいは「気づきの労働」ともいえる。
 「介護の心」もまた、介護職の人格の問題ではなく、職業としての社会的な役割の遂行であり、技能といえる。そのため、介護職が発する言葉や笑顔も自覚的に行われる「技術」であることが理解されるのが望ましい。
 しかし、この役割遂行が技能であることがなかなか受け入れられない。「介護の心」は本心からのものでなくてはならないと思いこまれているからである。だが、介護はすでに社会的労働として定着し、多くの雇用が期待されている分野でもある。介護は「愛と奉仕の精神を持った人」でなくてはならないとする倫理の強制は志のある若い介護職たちを追い詰めることになりかねない。
 外国人労働者が介護の担い手として期待されているが、労働倫理の異なる彼らにとって、人格と一体化された「介護の心」が求められるとすれば、異質なものとして映るだろう。だとすれば、外国人労働者の参入は介護の技能の定着の新たな契機になる。介護職の定着のためにも、介護の専門性が技能として、また、「介護の心」が社会的な技能として理解されることが必要である。

株式会社 日本生活介護 代表取締役社長 佐藤義夫

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